かつてクアラルンプールの中央駅として機能していたクアラルンプール駅。
現在もKTM(マレー鉄道)の一部の電車が乗り入れる駅として機能しているものの、クアラルンプールにおける公共交通機関の要がKLセントラル駅に集約されるようになってからは衰退の道を辿っています。
それでも…
100年以上の歴史を持つクアラルンプール駅はKLセントラル駅にはない魅力がある場所です。
クアラルンプール駅(Kulala Lumpur Railway Station)の概要

現在あるクアラルンプール駅は1910年に完成したものになります。
その歴史の古さから「クアラルンプールにできたはじめての駅?」と感じてしまうかもしれませんが、クアラルンプールの鉄道駅第1号というわけではなく、1910年以前にクアラルンプールには既に駅が存在していました。
英領マラヤにおける最初の鉄道駅はResident Station
英国統治下のマラヤにおけるはじめての鉄道路線は、1885年に開通したTaiping(タイピン)とPort Weld(ペラ州のKuala Sepetang)を結ぶライン。
翌年の1886年9月に2本目の路線として、クアラルンプールとクラン(Klang)を結ぶ路線が開通しました。
この時、クアラルンプール側の駅としてRoyal Selangor Clubの対面(現在ムルデカ広場がある場所)に作られたものが、通称Resident Station(レジデントステーション)と呼ばれる駅になります。
これががクアラルンプールにおいて一番はじめに作られた駅であり、今あるクアラルンプール駅の前身になります。

1910年に現在の場所にクアラルンプール駅が完成すると、Resident Stationは解体され、それ以降クアラルンプール駅が中央駅として機能しはじめます。
建築デザインの特徴
クアラルンプール駅の設計を担ったのは、英国人のArthur Benison Hubback。
英領マラヤにおいて、数々の建築物を手がけている人物です。

クアラルンプール駅に用いられている建築スタイルの特徴は、
- ネオムーア様式(Neo-Moorish)
- ムガル建築(Mughal Architecture)
- インドサラセニック(Indo-Saracenic Architecture)またはインドゴシック
…など、複数の要素が取り入れられていて、総合するとインドイスラム建築の要素が強く反映された建築物になっています。
かつてホテルが併設されていた

クアラルンプール駅はかつて駅に併設する宿泊施設(当初はStation Hotelという名称、1996年にThe Heritage Station Hotelに改名)がありました。
客室に加え、レストランやバーもあったものの、クアラルンプール駅の衰退と共にホテルは閉業しています。
現在、駅にはHeritage Station Restaurantがあり、Nasi Kandarを提供しています。
クアラルンプール駅はなぜ廃れてしまったのか

観光客をガッカリさせることが多いクアラルンプール駅。
建造物としては歴史的価値があり見応えがあるものの、それ以外に見所がない…というのがこの場所を訪れる人々の期待に応えられずにいる…という側面があります。
KLセントラル駅の台頭
1995年にはKTMB(Keretapi Tanah Melayu Berhad・マレー鉄道公社)初となる電化したKTMコミューターの運行が開始し、クアラルンプール駅は中央駅として繁栄していたものの、2001年にKLセントラル駅がクアラルンプール公共交通機関のハブとして位置づけられると状況が一変、衰退化の道を歩みます。
KLセントラル駅の台頭後も、クアラルンプール駅はKTMコミューターとETSが停車する駅として機能していますが、中枢機能がKLセントラルに移った後は閑散としています。
現状、KTMが運行するIntercity・ETS・Komuterのほか、KLIAエクスプレス&トランジット、LRTやモノレールなど、主要な交通ラインが全てKLセントラル駅に集約していることから、クアラルンプール駅を使うことの利便性が低く、利用者もまばらです。
新しい文化拠点として再生予定
廃れてしまったクアラルンプール駅ですが、Warisan KLプロジェクトの一環として修繕&再生工事が進められています。
クアラルンプール駅は「鉄道をテーマにした文化拠点」として再活用される予定と言われていて、今後はクアラルンプールの新しい観光スポットになる可能性があります。
Visit Malaysia 2026に合わせて工事が進められているようなので、生まれ変わった姿を見る日はそう遠くないはずです。
クアラルンプール駅の対面にあるマレー鉄道公社本部

クアラルンプール駅の対面にあるMalayan Railway Administration Building。
KTMB(マレー鉄道公社)の本社になります。
ムルデカ広場の近くにあったマレー連合州鉄道(Federated Malay States Railways、現在のKTM)の本部が1917年に現在Malayan Railway Administration Buildingがある場所に移動して以来、この場所に本拠地をかまえています。

Federated Malay States Railwaysの旧オフィスは、現在National Textile Museum(国立繊維博物館)になっています。
国立繊維博物館はムルデカ広場前にあるSultan Abdul Samad Building(スルタン・アブドゥル・サマド・ビル)のすぐ近くにあります。
Malayan Railway Administration Buildingも国立繊維博物館も、Arthur Benison Hubbackによって設計されたものになります。

マレー鉄道公社の本部は上記画像のように、大通りを挟みクアラルンプール駅と対面する位置にあります。

Malayan Railway Administration Buildingはムーア様式を中心に、ゴシック建築や14世紀のギリシャ建築の要素を取り入れた建築物になっています。
クアラルンプール駅とはまた違う重厚感があり非常に美しいです。
A.B. Hubbackが設計したそのほかの建造物
クアラルンプール駅・Malayan Railway Administration Building・国立繊維博物館のほかにも、A.B. Hubbackが設計した建物がたくさんあります。
例えば…
- Masjid Jamek
- Carcosa Seri Negara
- Ipoh Railway Station
また、A.B. Hubbackは、Sultan Abdul Samad Buildingの設計にも関わっています。
マスジッド・ジャメ駅周辺にあるモスクのMasjid Jamek(マスジッド・ジャメ)、ムルデカ広場前にあるSultan Abdul Samad Building、そして国立繊維博物館は、どれも見応えのある美しい建造物です。
Carcosa Seri Negaraは映画『クレイジー・リッチ』の撮影に使われています。

クアラルンプール駅とKTM本部を結ぶ地下連絡通路
クアラルンプール駅とMalayan Railway Administration Buildingの間には大きな道路があります。
クアラルンプール駅とMalayan Railway Administration Buildingの間を行き来するには、道路を渡る方法のほか、地下連絡通路を利用する方法があります。

クアラルンプール駅前にある連絡通路。

階段があるので降っていきます。

地下の連絡通路。
Malayan Railway Administration Building側に繋がっています。
ロケーション
まとめ
「見所がなかった…」と時に人々を落胆させることが多いクアラルンプール駅。
修繕工事が完了すれば、多くの人を魅了し輝きを取り戻せる場所になるはずなので、今後の変化が楽しみなスポットです。





