100年以上前に建設が開始され未完成のまま放置されたKellie’s Castle(ケリーズキャッスル)。
緑広がるエリアにポツンと佇む城は、その空間だけ時が止まったかのような不思議な雰囲気を放ちます。
ジョディフォスターさんやチョウ・ユンファさんが主演する『アンナと王様』など映画の撮影場所として使われたこともある“映える写真撮影”ができる観光スポットです。
マレーシアのケリーズキャッスルとは?

スコットランド人のWilliam Kellie Smith(ウィリアム ケリー スミス)によって建設されたケリーズキャッスル。
1890年、20歳の頃に土木エンジニアとしてマラヤに渡ってきたウィリアムは、Charles Alma Bakerの元で働いたのち独立し、ゴムのプランテーション事業等で富を築きます。
1903年、母親が亡くなると、ウィリアムは一旦スコットランドに帰国し、マラヤに戻る道中で妻となるアグネスと出会い結婚。
2人の子供の誕生に伴い、豪邸を作る計画を立て、これが今あるKellie’s Castleになります。
アグネスの宮殿と呼ばれていた
Kellie’s Castleと呼ばれているものの、実際には妻のアグネスが実家から相続したお金を多く使ったこと、アグネス名義で家を建てたことから、地元では“Agnes’s Palace”(アグネスの宮殿)と呼ばれたと言われています。
Kellas HouseとKellie’s Castle
Kellie’s Castleの見どころは、
- Kellas House
- Kellie’s Castle
…という2つに分類することができます。

Kellie’s Castleの後方に位置するKellas House。
結婚後、しばらくは木造の家に住んでいたウィリアムとアグネスですが、木造の住居は日中暑くなるため、レンガ造りの家を建てることを計画します。
1904年に娘のヘレンが誕生したことをきっかけに建設を進めた住居が現在残っているKellas Houseで、1909年に完成しています。

Kellas Houseの前に位置するKellie’s Castle。
息子のアンソニーが誕生した1915年から建設を開始した建物ですが、1926年にヨーロッパ旅行中のウィリアムが途中で立ち寄ったポルトガルのリスボンで肺炎により亡くなくなると、建設が中止されてしまいます。
ショックを受けたアグネスと子供たちはマラヤに戻ることはなく、ケリーズキャッスルや保有していた土地をHarrisons and Crosfieldというイギリス企業に売却します。
土地と建物を買収したHarrisons and Crosfieldに城の建設を続行する意思はなく、ケリーズキャッスルは未完成のまま周辺のジャングルに飲み込まれるように廃墟化の道を辿ります。
Kellie’s Castleの見どころ

ムーリッシュ様式、インドサラセン様式、ローマン様式を折衷して作られたケリーズキャッスル。
インドのマドラスから70人もの職人を呼び寄せて作られたもので、レンガ、大理石、タイルなどもインドから輸入したものが使われています。

ケリーズキャッスルの内部にある展示物。
ウィリアムの生い立ちや妻との出会い、マラヤにおける事業、ケリーズキャッスルの建築の特徴など、城の概要を知ることができる場所になっています。
また、ケリーズキャッスルは4階建て、14室、エレベーター、地下道、隠し部屋、インドアのテニスコート、隠し階段、ワインセラーつきなど、様々な計画を持って作られたものであることが記されています。
マラヤ初となる予定だったエレベーター

ケリーズキャッスルにあるエレベーターシャフト。
1926年のヨーロッパ旅行で、イギリスからエレベーター設備をマラヤに持ち帰るはずだったと言われていて、もしウィリアムがポルトガルで亡くなることなくマラヤに帰っていた場合、マラヤ初となるエレベーターとなったかもしれないものになります。
結果としてエレベーターの設備はなく、エレベーターシャフトだけが残っています。
秘密の部屋に繋がる螺旋階段

緊急事態に備えて秘密の地下道や秘密の部屋があると言われているケリーズキャッスル。
実際に城内には螺旋状の階段があり、これは地下の秘密部屋に繋がると言われています。
足がすくむような屋上

屋外からの景色を楽しむこともできるケリーズキャッスルでは、上記画像の矢印の場所に出ることができます。

中央部分の屋外スペース。

一番高いところにある屋外スペース。
かなりの高さがあるにも関わらず、しっかりした柵がないので、すごくスリリングな場所です。
「安全面は大丈夫なのかな…」と不安に感じるほどで、屋上に立つだけで思わず足がすくみます。

屋上から見える風景。
ジャングルを切り開いて作られたと言われるケリーズキャッスルですが、今でも豊かな緑が周辺に広がっています。
ウィリアムの亡霊が出ると噂される廊下

城の建設中、ウィリアムが志なかばで亡くなったことから、ケリーズキャッスルにはウィリアムの幽霊が出るという噂があります。
また、城を建設中に多くの労働者が亡くなったことからそれらの亡霊であったり、第二次世界大戦中の日本人兵の霊が出るという言い伝えもあるようですが、ケリーズキャッスルの廊下は素敵な雰囲気のある場所で、写真撮影に人気のフォトスポットになっています。
上記画像の場所では、写真撮影のために行列ができていました。
Kella’s Houseの見どころ

第二次世界大戦の影響で部分的に壊滅したものの、修復された場所もあるKellas House。

ダイニングスペースやキッチンスペースの跡地があり、住居として暮らしていた面影を感じることができる場所です。
イタリアから取り寄せた大理石

Kellas Houseのバスルームには、イタリアから輸入して取り寄せた大理石の残骸があります。
Kellas Houseが作られたのは1905年だと言われているので、120年近く前の大理石になります。
入場料
外国人の場合、大人はRM10、子供はRM8の入場料になっています。(2025年時点)
ケリーズキャッスルのロケーション
Lot 48436, Kompleks Pelancongan Kellie’s Castle, KM 5.5, Jalan Gopeng, 31000 Batu Gajah, Perak
Perak(ペラ)州のBatu Gajahという場所にあり、イポー中心部から車で30分程度でアクセスできます。
まとめ
入場料を取っている割には、適切なメンテナンスが行われていない印象もある場所ですが、ジャングルだったと思われる場所に立派なお城を作ろうとしていたウィリアム ケリー スミスの心意気に想いを馳せることができる場所です。
イポーのオールドタウンから車でそれほど遠くない場所にあるので、イポー観光日程に余裕がある時に立ち寄ってみる形がおすすめです。

