断食(ラマダン)明けの大祭であるマレーシアのHari Raya(ハリラヤ)。
そんなハリラヤに欠かせない食べ物の1つにKetupat(クトゥパッ)があります。
この記事では、Ketupatの概要とNasi ImpitやLemangとの違いについて紹介します。
インドネシア発祥のKetupatとは?
インドネシアを発祥とするKetupat(クトゥパッ)。
椰子の若葉で編み込んだ容器にお米を包み、茹でて作られる粽の1種になります。
インドネシアのほか、マレーシア、シンガポール、ブルネイなどでも食べられています。
Ketupatの発音
Ketupatの発音はクトゥパッ。
最後のtは控えめに発音するため、日本語で「ト」を発音する時のようなはっきりした音ではなく、聞こえるか聞こえないかくらいの音になります。
そのため、カタカナにすると、クトゥパットというよりもクトゥパッになります。
Ketupatの歴史
Ketupatの発祥地と言われるのは、インドネシアのジャワ。
インドネシアでKetupatが断食明けのLebaran(レバラン)に食べられるようになったのは、15世紀頃のドゥマク王国(Demak Sultanate)からだと考えられています。
Journal of Ethnic FoodsのKetupat as traditional food of Indonesian cultureによると、ジャワにイスラム教を広めた聖人の1人であるSunan Kalijagaが定着させた慣習になります。
Ketupatの意味とは?
Ketupatは、ジャワの言葉でKupatと呼ばれることもあり、Kupatにはngaku lepat=「己の過ちを認める」という意味があります。
また、Ketupatを構成する外側の椰子の葉と内側のご飯にも意味があり、
- 複雑に編み込んだ椰子の葉=人間の罪や過ち
- 白いご飯=断食を経て得られる精神の純潔さや清浄さ
…を象徴するとされます。
欲望を抑え、精神と身体を清める聖なる期間であるラマダンに続くHari Raya(ハリラヤ)。
ハリラヤでは、“Maaf Zahir dan Batin”という赦しを求めるフレーズを使い、その1年間の自分の良くない行いを認め、赦しをこい、また互いの過ちを認め合うという慣しがあります。
Ketupatは、それが持つ意味合いから、ハリラヤに欠かせない食べ物になっています。
マレーシア・ハリラヤの象徴のKetupat
マレーシアではハリラヤが近づくと、Ketupatを模したデコレーションが至るところに施されます。
ショッピングモールも、Ketupatを使ったデコレーションに変化します。
こんな飾りも定番です。
ちなみに、Ketupatを茹でたあとに、しばらく外に吊るし、乾燥させるために干しておく最終プロセスがあるのですが、これは悪霊を自宅に寄せつけないようにする魔除の意味もあるそうです。
Ketupat(クトゥパッ)の種類
インドネシア国内だけでも、
- ジャワ
- バリ
- スマトラ
- カリマンタン
…など、地域によって異なるレシピが存在し、形状、調理法、具材、食べ方(一緒に食べるおかず)など、そのバリエーションは豊かです。
ただ、ざくっと大きく分類すると、
- Ketupat Pulut(クトゥパッ プルッ)
- Ketupat Nasi(クトゥパッ ナシ)
…という2つに分けることができます。
Pulut(プルッ)は糯米、Nasi(ナシ)は普通のお米を使ったもので、食感が異なります。
マレーシアのKetupat(クトゥパッ)
マレーシアにも、北部や東海岸エリアなど、地域により様々なKetupatがあります。
例えば、フィリングのないシンプルなKetupatから、豆類やコーンをフィリングとして加えるもの、Pulut Hitam(プルッヒタム)と呼ばれる黒糯米を使うKetupatなどがあります。
また、クランタンやトレンガヌなどのマレーシア東海岸には、葉を使わずイカのなかにお米を入れて作るKetupat Sotongがあります。
Ketupat Daun Palas(クトゥパッダウンパラス)
ペナン州やクダ州などマレーシア北部で定番のKetupatは、Ketupat Daun Palas(クトゥパッ ダウンパラス)。
糯米を使った粽で、ココナッツミルクで味つけします。
Ketupat Pulutと同じものですが、マレーシアではKetupat Daun Palasと呼ぶことが一般的です。
Ketupat Daun Palasは、Daun Palas(ダウンパラス)と呼ばれる葉を使うところが特徴です。
こちらがDaun Palas。
マレーシアの道端に生えていることが多い、よくある植物です。
Daun Palasは、茹でると緑色からやや黄色味を帯びた色に変わります。
中華粽に使う葉は、茹でると茶色や黒っぽく変色しますが、Daun Palasは明るい色に仕上がるため、見た目が綺麗です。
1枚の葉を使って作るKetupat Daun Palas(クトゥパッ ダウンパラス)。
形状は三角形をしています。
美味しいKetupat Daun Palasは、ココナッツミルクの風味や塩加減が絶妙で、とても美味しいです。
Ketupatと一緒に食べる定番の料理
マレーシアでは、ビーフルンダンやチキンルンダン、Kuah Kacang(クアカチャン)と呼ばれるピーナッツソースを添えて食べることが一般的です。
また、Ketupatはサテーと一緒に食べることも定番です。
Nasi ImpitやLemangとの比較
マレーシアのハリラヤのご馳走で、Ketupat Pulutと一緒に提供されることが多い食べ物に、
- Nasi Impit
- Lemang
…があります。
どちらもお米を使った料理になりますが、Ketupat Pulutとは異なるものになります。
Nasi Impit(Ketupat Nasi)
Nasi Impit(Nasi Himpit)は、基本的にKetupat Nasiと同じものです。
Lontong(ロントン)と呼ばれることもありますが、マレーシアではNasi Impit(ナシ インピッ)と呼ぶことが一般的です。
糯米ではなく普通のお米を使っていること、ココナッツミルクを加えず、お米と塩だけで作ることから、非常に淡白な味です。
単純にお米を潰したもので、お米のつぶ感をなくした食べ物…というイメージになります。
サテーと一緒に食べることが多く、サテーを販売しているお店では、Nasi Impitを一緒に売っていることがあります。
シンプルな料理なので、Nasi Impit自体を食べると「普通だな…」と感じることがあるかもしれませんが、サテーやルンダンなどと一緒に食べると美味しいです。
Lemangとの違い
Lemangは、ココナッツミルクで味つけした糯米を竹筒のなかに入れて作られる料理です。
Ketupat Pulut(Ketupat Daun Palas)に似た風味ですが、調理法が大きく異なります。
KetupatやNasi Impitはハリラヤの時期でなくても、普通に食べることができますが、Lemangに関しては、ラマダンがはじまりハリラヤが近づくと、道端でモクモクと煙を上げながら作っている様子を目にすることが多くなるもので、特別感があります。
そのため、ハリラヤ前後にマレーシアを訪れる機会があれば、Lemangを食べてみる方がおすすめです。
まとめ
インドネシアを発祥とし、マレーシアで広く親しまれているKetupat(クトゥパッ)。
Ketupatの歴史や意味を理解すると、
- なぜハリラヤに食べるのか?
- なぜデコレーションに使われているのか?
…ということが明確になると思います。
以上、Ketupat(クトゥパッ)についての紹介でした!